ドイツ対スペイン

2年前のユーロの決勝の再現ですな
ドイツは借りを返す大きなチャンス


正直2年前は圧倒的にスペインが強かった。スコアは1−0だが、内容的にはスペインが完全に上で、というか他の試合を見ても当時のスペインの強さは群を抜いていて、優勝が当然の結果だった

対するドイツは、少なくともファンの俺から見てもそこまで出来がいいとは思えず、クロアチアオーストリア相手に苦戦もしながら勝ちあがってきたという印象だった。決勝まで行けたのは所謂ゲルマン魂というところで、実際のサッカーの質は高くなのは一目両全だった


2年たった今、スペインは当時とさほどかわらない
特にアタッカーに関しては2年前と同じで、特別な攻撃パターンが追加されたわけではない。逆に言えば今のスペインのサッカーはバルサのメンバーを基調として、すでに完成されつつある。「違い」を生み出す必要のない形ができあがっている。その中で2年前と違うのはトーレスの大不調と最終ラインの若干の不安である


対するドイツは大きく変化した
エジルを含め、半分は意図的に変化させてきた部分だが、もう半分は偶然産物だと言わざるを得ない
そうバラックを始めとした主力の負傷離脱、不調だ。ざっとあげるだけでもバラックロルフェス、トレーシュ、ヒツルスベルガー、ヴェスターマン、エンケ、アトラーと絶望するくらいに人材が不足していた

ミュラー、クロース、バドシュトゥバーらは今シーズンのブンデスでブレイクしたばかり、経験も少ない。言ってみればサプライズ召集に近い。だがそういった選手、特にミュラー、がプレッシャーを感じずに素晴らしいプレーを見せている。経験不足を若さと勢いでカバーしている感じだ。まあバドシュトゥバーは落ち着いてるのでどちらかというとメルテザッカーの系譜かもしれないが
守備ブロックも守護神エンケ、アトラーの穴をノイアーがカバーし、ヴェスターマンの穴はベテランのフリートリヒが安定したプレーを見せている

何といってもバラックが抜けた中盤をシュバインシュタイガーケディラで完璧にカバーしているところだ。特にシュバインシュタイガーのパフォーマンスは目を見張るものがあり、世界でも指折りのボランチになりつつある。もともとあった攻撃的センスをそのままにプレーエリアを格段に広げた印象だ。守備の意識も高い。ケディラシュバインシュタイガーの影に隠れがちだが、攻撃守備の両面で運動量が豊富だ。シュバインシュタイガーがこれほど仕事ができるのはその空いたポジションをケディラがカバーしているからに他ならない。予選での出場は0とは思えないほどのコンビネーションがドイツの支えていると言っても過言ではない。この二人のどちらかでも欠けた場合、ドイツは窮地に陥るだろう。上記に挙げた通り、このポジションの控えは実質いないわけだし。

攻撃陣はエジルを加え、バリエーションが格段に増えた。エジルは今までのドイツにはいない(厳密に言えばダイスラーやリッケンなどセンスのある選手はいたが怪我で大舞台での活躍することは皆無だった)プレイヤーで、巧さ、強さ、速さすべて兼ね備えたプレイヤーだ

そしてそのエジルを引き出してるのがベテランクローゼだ。あまりサッカーに興味のない人からすれば「ヘディングが強い」程度の選手かもしれないが、クローゼは味方を引き出すのが非常に巧い選手で、労を惜しまない運動力とキープ力が彼の一番の強みだ。エジル本人が「クローゼはやりやすい」と発言することからもわかるとおり得点能力以上の役割がお起きのが分かる。試合を作るうえで欠かせない選手なのだ。前線でボールが貯められなければ試合の主導権を握ることはできず、サイド攻撃を引き出すきっかけすらない。分厚いサイド攻撃は今までのドイツにはなかった。エジルミュラーがいるから成り立つといっても過言ではない
ただしミュラーの出場停止は痛い。これがどう響くか…


ポドルスキもクローゼと同じクラブでは役に立たない存在だが、代表では別人というマジカルレフティ。クローゼがいるからこそ彼に集まるプレッシャーもあまり強くなく、比較的自由に出来ている印象がある。また本人は無駄打ちも多いものの、場面によってはしっかりとクローゼがターゲットとして飛び出してくれるので無理に中に切れ込まなくても十分というのもある。またラームを中心とした右サイドで試合を作っている時に左のガラ空きのスキをうまくついているのも素晴らしい。フリーならば彼のシュートの威力は簡単に止めることはできない

レーヴ監督はいくらクラブで不調を極めててもクローゼの起用にこだわった。実際予選でもクローゼは得点を重ねている。彼の存在は本当に大きい
今のメンバーではクローゼ以外はベテランと呼べるのはフリートリヒしかいない。その二人がしっかりと若手の力を引き出しているという素晴らしい状態なのである
またバラックが抜けたことが、皮肉にも組織プレーの意識を高めている。もう「皇帝」の時代ではないのだ


2年前は相手にならなかったスペインに、どう挑むのか本当に楽しみである
スペインも初の決勝、そして優勝を目指すためには絶対に勝たなければいけない相手
ここで勝ってこそ初めて最強の名を手にいれられると